今日は、旧商法266条(会社法429条)を中心に昭和44年11月26日の最高裁判例を検討してみたいと思います。
株式会社を経営される方ならご存知だとは思いますが、株式会社には、取締役・代表取締役・監査役などの役員を必要に応じて設けなければなりません。
しかし、実際には小規模な会社であるにもかかわらず、上記のような数種の役員を導入してしまうと、思わぬところで面倒な手続が必要となる場合があります。
そのような理由から、会社法施行後設立される株式会社のほとんどは、取締役兼代表取締役を1名とする、もっとも簡易に設立できる株式会社です。
しかし、会社が軌道にのってくれば必然と考えるべきことがあります。
「税金」です。
税金のことはもちろん専門家である税理士に聞くことが一番確実ですが、司法書士の立場からも少しだけ注意を促したいと思います。
法人税対策の基本といえる役員報酬。もちろん、役員となるためには、役員変更登記が必要になります。
日本にあるほとんどの法人(95%以上)で、法人税対策の一環として役員を増やし、会社の円滑な活動を促すとともに、役員へ支給される役員報酬を法人所得から控除するという手段を用いています。
そのような目的からまったくの名前貸しといったような取締役も存在しています。
しかし、役員になる人は注意が必要です。
基本的に会社の債務や責任を負うのは、取締役ではなく代表取締役です。会社名義での借り入れやそれに対する保証も代表取締役が行うものですが、旧商法266条の3(会社法429条)には、取締役の第三者に対する責任の規定がおかれています。
これは、取締役が職務を行うにあたって、故意・重過失(ちょっと注意すれば免れたことに対して、そのちょっとした注意さえもしなかったこと)により第三者に損害を加えた場合は、直接その責任を負うというものです。
本来、取締役は、会社に対して善良な管理者の注意義務を負うにすぎず、その責任も会社内部で負うものであり、対外的に当然に責任を負うものではありません。
しかし、昭和44年11月26日の最高裁判例では、「株式会社の活動は、その機関である取締役の職務執行に依存するものであることを考慮して、第三者保護の立場から、取締役において悪意又は重大な過失により右義務に違反し、これによって第三者に損害を被らせた時は、取締役の任務懈怠と第三者との損害の間に因果関係があるかぎり、会社がこれによって損害を被った結果、ひいて第三者に損害を生じた場合であると、直接第三者が損害を被った場合であるとを問うことなく、当該取締役が直接に第三者に対し損害賠償の責に任ずべきことを規定した」としている。
会社法429条をみると、やはり、直接的に第三者に故意・重過失により損害を与えた場合のみ責任を負うように思えますが、上記判例では、第三者が、取締役の第三者に対する故意・重過失を立証せずとも、取締役の会社に対する任務懈怠を立証すれば、直接取締役に損害賠償請求できるとしています。
私個人できには、当該判決にかかわった裁判官のうち、反対意見を述べている松田二郎裁判官の意見に賛成です。
現代社会の実情からみても、代表取締役ではない取締役までにその責任を容易に追求できると、責任の所在が不明確になるどころか、個人と法人の境目をもうけた法の趣旨が無意味となります。また、株式会社の取締役まで無限責任社員(合名・合資会社)と同視することとなり、株式会社の経営において、優秀な人員の確保も難しくなるように思えます。
では、実際にそういった取締役が責任を負うケースはおおいのかと疑問があるかと思います。
答えは、「少ない」です。
やはり、当該取締役が、第三者に対して、虚偽の事実を述べたり、虚偽の議事録ろ作成したり、結局は第三者に対して故意・重過失がある場合のようです。もちろん、まったく無関係の名前貸しの取締役が責任を負ったケースもありますが。
少し長くなりましたが、実際に取締役が任務懈怠により責任を問われるケースは少ないと思いますが、取締役に就任される方は、その可能性があることを承知の上で、就任すべきだと思います。
実質の会社の代表取締役が、明らかに違法な行為をしない限り、(内部的に無過失の)取締役の経営責任を問われることはほとんどないように思います。
なぜなら、(故意・重過失がない)無過失な者を、故意・重過失があるとして訴えるには、訴える側がそれを立証しなければならないからです。
自己の利益のみを追求する可能性の低い、親や兄弟が経営される会社であれば、さほど心配はいらないでしょう。
ですが、まったく関係がない方が代表取締役をされている会社の役員に就任される際には、弁護士・司法書士・税理士等に相談の上、決定されることをお勧めします。
司法書士 趙 成来









